神経内科
当院神経内科では、脳・脊髄・末梢神経・筋肉の病気を診ております。
パーキンソン病・パーキンソン症候群、認知症、頭痛、てんかん、不随意運動(震え、ぴくつき)、脳梗塞、多発性硬化症、髄膜炎・脳炎、脊髄炎、重症筋無力症、ギランバレー症候群、圧迫性ニューロパチーなどの末梢神経障害、筋疾患などです。
疾患によっては、脳神経外科等の診療科と協力しながら治療を行います。
手根管症候群、肘部管症候群などの圧迫性ニューロパチーでは、神経伝導検査で圧迫部位を同定し、整形外科にて手術加療を行うことも検討いたします。
手足の震え、しびれ、動かしにくさ、物忘れ、頭痛、ろれつ困難、歩行困難、言語障害等の症状があれば、迅速に検査治療を行うと回復が良い病気も多数ありますので、お早めに受診してください。
なお、神経内科は精神科や心療内科とは異なります。
神経内科は脳や脊髄、末梢神経、筋肉といった身体の疾患を主に診ます。その一方、身体の症状がメインながら検査をしても異常が見つからない、あるいは経過からストレスなどが関連していると思われる場合は、心療内科・精神科が担当することになります。
神経内科
部長 片山 由理
脳卒中内科のご紹介
「脳卒中内科」は、脳卒中(脳血管障害)の診断と治療を専門とする診療科として、2020年4月1日に当院に新設されました。当院の「脳卒中・脊椎脊髄センター」の一員として、脳神経外科と協力して脳卒中診療を行っています。
また、当院は、日本脳卒中学会の一次脳卒中センターに認定されており(2019年9月1日付)、24時間365日体制で積極的に脳卒中患者さんを受け入れ、診療を行っています。

この中で、当科の最も得意とするところの脳神経血管内治療(カテーテル治療)について、その代表的な術式として、1)脳血栓回収療法、2)頸動脈ステント留置術、3)経皮的血管形成術・経皮的ステント留置術を以下にご紹介します。
脳卒中(脳血管障害)を大きく分けると、虚血性脳卒中(脳梗塞、一過性脳虚血発作)と出血性脳卒中(脳出血、くも膜下出血など)に分けられ、虚血性脳卒中が全体の約75%を占めます(脳卒中データバンク2015)。すべての脳卒中患者さんを脳神経外科と協力して診療を行っていますが、脳卒中内科は虚血性脳卒中の診療を中心に行っています。
虚血性脳卒中の診療は、①発症予防、②急性期治療、③慢性期治療・再発予防に分けられます。
①発症予防について
動脈硬化の危険因子として、高血圧、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症、肥満・メタボリック症候群などの生活習慣病の診療を、内科・循環器内科と協力して行っています。このような危険因子を持つ患者さんは、頭部MRIや頸動脈超音波検査などで脳梗塞発症リスクを評価し、しかるべき対策を行います。
②急性期治療
急性期脳梗塞に対しては、血栓(血液の塊)を溶かして血流を再開させる治療(tPA静注療法、血栓溶解療法)、カテーテルという細い管を脳血管の中に入れて血栓(血液の塊)を取り除き、血流を再開させる治療(血栓回収療法)を行います。前者は発症から4時間30分以内、後者は発症から6時間以内(場合によっては24時間以内)の症例に対して行うことができます。当院では、24時間365日、このような急性期脳梗塞に対する緊急治療を行う体制を整えています。
また、血栓溶解療法や血栓回収療法の適応のない患者さんに対しては、抗血栓療法(血液の塊をできにくくする)を行って、病状の悪化を防ぐ治療をおこないます。さらに、すべての脳卒中患者さんに対しては、急性期からリハビリテーションを行って、早期回復を目指します。
③慢性期治療・再発予防
脳梗塞の急性期治療後、速やかに発症原因の精査、それに対する治療を行います。脳梗塞の発症原因は様々で、代表的な疾患として、頸動脈狭窄症、脳動脈狭窄症、心房細動などがあります。これらに対して、薬物治療を中心とする内科的治療、およびカテーテル治療や手術といった外科的治療を検討し、最適な再発予防治療を提供しています。
1)脳血栓回収療法
発症、あるいは最終未発症確認から6時間以内の脳梗塞に対して、適応基準を満たした症例に関しては、カテーテルという細い管を用いて血管内治療を行います。また、さらなる適応基準を満たした症例に関しては、16時間以内、24時間以内の症例であっても、血管内治療を行うことがあります。
実際の治療の図を以下にお示します(J NeuroIntervent Surg 2015, 7, 2-7から転載)。

上左図はステントリトリーバー(筒状の金属メッシュ)による血栓回収術、上右図は血栓吸引カテーテルによる血栓回収術を示したものです。これらは、どちらの方法でも治療効果の優劣はないとされています。

また、左図は、ステントリトリーバー(筒状の金属メッシュ)と血栓吸引カテーテルを組み合わせて、血栓を回収する方法を示しています。ステントで血栓を絡めて、さらに血栓吸引カテーテルで取りこぼさないようにするという、理にかなった方法で、こちらも広く普及している方法です。
次に、実際の症例をお示しします。45歳、女性、重度の左)片麻痺を呈していました。下左図のように、右)中大脳動脈が閉塞しており(赤矢印)、ステントリトリーバー(筒状の金属メッシュ)と血栓吸引カテーテルを組み合わせて、血栓回収術を行いました。下右図は治療後の写真を示しますが、右)中大脳動脈の閉塞は解除され、血流が完全に回復しています。治療後、左)片麻痺は完全回復し、9日後に、元気に歩いて退院されました。

2)頸動脈ステント留置術
内頚動脈狭窄症は、脳へ血流を送る内頚動脈が、動脈硬化などが原因で細くなって血流が障害されるため、脳梗塞を起こすことがあります。すでに脳梗塞を発症した症例、または今後、脳梗塞を発症する危険性の高い症例に対して、適応基準を満たした症例に関しては、頸動脈ステント留置術(CAS;キャスと読みます)を行います。
実際の症例をお示しします。77歳、女性、高血圧があり、動脈硬化性疾患の精査で行った頸動脈超音波検査で、内頚動脈狭窄症が見つかりました。脳梗塞は発症していませんでしたが、非常に高度の狭窄で、今後脳梗塞発症リスクが高かったため、CASを行いました。

上左図は治療前、赤矢印で示すように、非常に高度の狭窄があります。上右図は、CAS術後で、狭窄部がステントで拡張され、脳への血流が改善しているのがよく分かります。
この治療は、局所麻酔(目が覚めている状態)、1時間~1時間30分ほどの時間で完了し、問題がなければ4-5日で退院可能です。
3)経皮的血管形成術・経皮的ステント留置術
脳動脈狭窄症は、脳の動脈が動脈硬化などが原因で細くなって血流が障害されるため、脳梗塞を起こすことがあります。すでに脳梗塞を発症した症例に対しては、まず内科的治療(薬物治療)を行いますが、それでも症状が悪化したり、再発したりする症例に関しては、脳動脈の経皮的血管形成術(バルーンによる血管拡張術)、経皮的ステント留置術(筒状の金属メッシュで血管内腔を確保する方法)を行います。
実際の症例をお示しします。74歳、女性、右)片麻痺で発症した脳梗塞で、脳動脈閉塞症(左中大脳動脈閉塞症)と診断しました。下図左は治療前の写真で、血管が途絶している(赤矢印)のが分かります。下図中はバルーンによる血管拡張術を行った直後ですが、血管がだいぶ再開通して(赤矢印)、血流が回復しています。しかし、まだ狭窄が残存し、十分な血流ではなかったため、ステント留置術を行いました。下図右がステント留置後の写真ですが、狭窄は改善して十分な血流が確保されたのが分かります(赤矢印)。

以上、脳卒中内科の診療内容、得意とする治療手技について、ご紹介させていただきました。脳卒中内科は、脳神経内科、脳神経外科、放射線科、看護部、リハビリテーション科、臨床検査部、薬剤部など、あらゆる部門と協力して、急性期から慢性期までの脳卒中患者さんの診療を行っています。また、大阪市立大学・脳神経外科学講座、およびその関連病院とも連携し、最先端の治療を提供できる体制を整えています。また、脳卒中に限らず、脳神経疾患、動脈硬化性疾患に関しても随時診療致しておりますので、まずは気軽にご受診いただきますようお願い致します。
脳卒中内科 医長 松崎 丞