頭痛専⾨医経験10年超の脊椎脊髄専⾨医からの提⾔:2025年2⽉市⺠公開講座より
明らかな疾患がないが、⽣じる頭痛を⼀次性頭痛というが、その御三家が⽚頭痛(22〜52%)、緊張型頭痛(37〜51%)、群発頭痛(0.8%〜3%)である。
⽇本の頭痛診断は国際頭痛分類、頭痛診療ガイドラインに沿って⾏われるが、明らかな疾患(脳卒中、脳腫瘍など)により引き起こされる⼆次性頭痛である頻度(頭痛外来受診の数%程度)は⼀次性頭痛と⽐較してかなり低い。
上記より導き出される対応法として、いかにして⽚頭痛(⾎管性頭痛)、緊張型頭痛にならないようにするかということになる。
⽚頭痛の発⽣源(generator)は視床下部、視床あたりにあるとされる。視床下部は下垂体とも関連し、ストレスホルモン(コルチゾール)、満腹中枢、性⾏動、体内時計(メラトニン)、睡眠ホルモン(オレキシン)などに密接な関わりを持っている。だからこそこれらに関連する前兆症状が出るといわれる。
この刺激が脳幹核(中脳周囲灰⽩質、⻘斑核、三叉神経核等)に伝わり、ここからセロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質が後頭葉⽪質に伝わると、⽪質拡延性抑制(Cortical spreading depression)が⽣じ閃輝暗点が起こる。ここから硬膜⽅向へ刺激が伝わると硬膜⾎管が収縮、拡張反応を⽣じて⽚頭痛発作を⽣じる。また、脳幹の三叉神経核より三叉神経節へ伝わる経路から頭⽪硬膜⾎管の⾎管反応が⽣じて⽚頭痛発作を⽣じる。
この伝達順は、いくらかのPET study で明らかになっている。⼀⽅、緊張型頭痛は頚部筋⾁の緊張、バランス障害で⽣じる。
上述のように頚部にgeneratorがあると、鑑別に注意を要する。その中で、脊柱を介した構造学の問題がある。頭側からの重みを⽀える重⼒線の末梢にあたる、⾜から⾜関節、膝、股関節の歪みを⾻盤で受け、⾻盤の歪みを脊柱が受ける。体腔内臓器か らの刺激が傍脊柱筋の緊張に及んだ際の関連性、またこれによる脊柱の歪み。
また上肢から肩関節の歪みは肩で受けて脊柱で受ける。バランスを取るために頭部の向きをコントロールする必要性がある。結果、頚部をgeneratorとする頭痛が⽣じうる。これと逆の経路としては頭蓋、顔⾯の歪みからの頚部への刺激がある。また、頚部への直接的な関連としては頚部を屈曲していった際の後頚部への重さの増強がある。
これに関連する最近のtopicsはいくらかある。
他に考慮しないといけない事項としては、⽇常⽣活で⻑時間過ごす姿勢、動作にある。
1つに座位姿勢である。中村格⼦⽒の著書ではゼロポジ座りが推奨されている。ゼロポジとはゼロポジッションのことで、関節に関連の筋⾁が負担を受け難く、腰にも負担の少ない姿勢で、股関節の⾓度が110°とされる。
ここに付け⾜したい考え⽅が、寝姿勢のゼロポジである。寝姿勢も⻑時間⼈間が過ごす姿勢であり、重要な役割をマットレス、枕が果たすことになる。
臥位姿勢と、肩、背中、臀部の突出度は密接に関連しており、計測値からの寝具調整は重要である。
動作に関連して、⼩児からの運動パターン形成が重要である。しかし、各家庭の考え⽅に基づき運動の2極化が問題となっている。⼩学⽣、中学⽣の運動時間低下があり、5歳の運動の壁が越えられない⼩児ロコモ、発達性運動障害の可能性に留意が必要である。
多いパターンとしては、ハムストリングスの短縮から、⾻盤後傾となり、猫背になるパターンである。また右前⾻盤、膝の内反、下腿内側の疲労性⾻膜障害、下腿痛、⾜痛も問題となる。これらの改善策として体幹トレーニングが推奨されており、脈波の揺らぎ(周波数解析)から解析する⾃律神経の状態も加味した頭痛⽇常診療が重要である。
⽇常⽣活動作でこれは避けられない姿勢であるが、最低限にしていく努⼒が必要である。しかし、2次性頭痛でないとわかると⽣活習慣の補正を忘れてしまう。
うつ向きバーデンをまた溜めてしまい頭痛を発症してしまう。気をつけて周りを⾒てみると、ほとんどの仕事、⽣活動作にうつ向き動作が含まれている(掃除、料理、階段下り、スマホ確認、パソコン打ち込み時etc)。その危険性に皆気づいているのだろうか。
不可逆的な脊柱の変形を作らないようにするために、注意して顎を上げ、猫背を避ける。そのためには⾻盤から⽴て、関節可動域を維持して、正しい座位、⽴位、歩⾏を維持することを忘れない。
その戒めとして、萱島頭痛宣⾔2025を贈りたい。
2025年2⽉15⽇
社会医療法⼈萱島⽣野病院
脳神経外科 ⼤重英⾏
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