当脊椎脊髄センターは、高度な脊椎•脊髄疾患の診断•治療(手術)技術と安心できる医療サービスを提供することを信条としています。脊椎脊髄外科指導医が頭蓋頸椎移行部から脊椎脊髄全般の疾患の外科治療を担当しています。神経内科とも共同で脳神経内科的疾患にも対応しています。脊椎変性疾患では整形外科で初期対応、保存的治療が行われますが、効果少ない場合などは脊椎脊髄センターで外科治療適応を検討することになります。センター長の 西川 節 は、頭蓋頸椎移行部疾患の外科、頸椎頸髄疾患の外科治療のエキスパートとしてBest Doctors in Japan (Teladoc Health, Inc.) とDoctor of Doctors (T-PEC, Inc.)に選ばれています。
症例・手術例の増加とともに、学会でも評価されている高い症状改善率を保っています。合併症の発生も 2.1%~2.7% と全国標準値(3.7~3.9%)を大幅に下回っており、より安全に手術が行えています。頸椎症性脊髄症・神経根症、後縦靱帯骨化症、変形性脊椎症、腰椎椎間板ヘルニア、腰椎脊柱管狭窄症を主に、頭蓋頸椎移行部疾患(Chiari 奇形他)、脊椎・脊髄腫瘍の手術など難易度の高い手術や経皮的椎体形成術(Balloon Kyphoplasty: BKP®)、脊髄電気刺激などの新しい手術も行っています。
頸椎は頭を支え、腰は体を支えながらいつも動いています。しかもこの脊椎が積み重なって構成する<脊柱管>の中に重要な神経組織である脊髄が入っています。これら脊椎、椎間板、靱帯が事故によってつぶれたり、破れたり(脊椎損傷)、長年の運動のために老朽化して変形したり、靱帯の損傷、緩みなどによってグラグラになって脊椎の骨のズレが生じたり(変形脊椎症)することによって、脊柱官の中に入っている脊髄、神経根が圧迫されて神経症状が発現します。
脊椎、椎間板、靱帯などの変形によって脊髄、神経根が圧迫されていること。
脊椎の運動によって脊髄、神経根への障害が加わること。
写真のように脊柱管内への少々の突出でも、首を前に曲げると脊髄の前方で、後ろに曲げると脊髄の後方で脊髄への圧迫の度合いが強くなったり、神経根が牽引されます。長期間にわたってこのようなことが何度も起こっていると脊髄の障害が増し、損傷が進むことは容易に推察されます。
このように脊髄への圧迫が強く急激に生じたり、たとえその圧迫が弱くても長く続くと脊髄を構成する神経組織が弱ってその機能が低下したり失われてしまいます。このことによって様々な神経の症状が出現してきます。また神経がその機能が低下していなくても、脊椎、椎間板、靱帯の変性、変形、ズレによって頭痛、頸部痛、背部痛、腰痛が生じます。ですから、これらの痛みは神経症状が出現する前の危険信号と言えるでしょう。
症状は大きく分けて3つになります。
例えば頸椎に病変があると、頭痛、頸部痛、肩の痛み、腕の痛みが生じます。また、手や足への神経の圧迫、障害によって手や脚が痺れたり、感覚が鈍くなったり、力が入りにくくなります。具体的には箸が使いにくくなったり、衣服のボタンが止めにくくなったり、階段を降りにくくなったりします。
例えば腰に病変がると、腰痛が生じます。また、足への神経の圧迫、障害によって脚が動かしにくくなったり、力が入りにくくなります。具体的には足をひずるようになります。さらに症状が進行すると排尿や排便が不自由になります。
レントゲン写真やCT scanで骨の変形の度合いを調べます。また、首を前後に動かした状態でレントゲン写真を撮って骨のズレの状態を調べます。MRIで神経や脊髄が圧迫されている状態を調べます
治療は基本的には上記の<静的要素><動的要素>を治療することになります。すなわち<静的要素>の治療は圧迫を解除<除圧>することです。<動的要素>の治療は脊椎を安静すること、動かないように<固定>することです。治療は保存的治療と外科的治療(手術)があります。
保存的治療:薬物投与、マッサージ、理学療法、鍼灸、牽引療法
外科的治療:手術:後述
治療方法の適応は、患者さん個人個人によって異なります。患者さんの年齢、仕事、全身状態、症状の範囲、度合いなどを考慮書ながら患者さん各人と相談しながら決定されます。
頸椎の椎間板が疲労のためや老化のために変形して擦り減ってしまうと骨同士が直接ぶつかり合うようになります。この結果、骨に棘<骨棘:こつきょく>ができてきます。また、脊椎同士を繋げるテープの役目をする<靱帯>も厚くなってきます。すると、脊柱管すなわち神経、脊髄の入れ物の空間が狭くなるため、脊髄や神経が圧迫されることになります。椎間板や骨棘のために起きる首の痛みや凝り(肩こり)だけでなく、神経まで侵されることになります。この状態を総称して<変形性頸椎症>あるいは<頸部脊椎症>と呼んでいます。
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先ずはご自分で痛みの起きる首の位置などを避けることが大切です。就寝の際の枕の高さを工夫するのも一つの方法です。
首の周りの筋肉の緊張を和らげるために、暖めたり、超音波レーザーを当てたりすることも行われています(しかしこれらについての効果には科学的根拠はありません)。牽引療法もよく行われていますがこれにも効果に科学的根拠はありません。鍼灸、マッサージなどの治療方法もあります。しかし、症状が改善しない治療方法を続けることはお勧めしません。いずれの治療方法も継続の目安は3週間〜3ヶ月です。いずれにしても正しく診断して見通しを立てておくことが重要です。
<軸性痛><神経根症>は上記の<保存的治療>で症状がかなり改善することが期待されます。しかし、手足の痺れや動きに問題があるようですと<脊髄症状>の可能性が高いです。脊髄症状の場合、今後数年のうちに脊髄の圧迫によって手足が動かなくなって、歩けなくなる確率が高いので、さらなる手段(すなわち手術)を視野に入れておく必要があります
頸椎の椎間板の変性とともに、脊椎の椎体の連結性を補強する靱帯のうち後縦靱帯こうじゅうじんたい)が骨のような硬い組織に変性する病気で、アジア特に日本、韓国に多い病気です。病態と進行性で重篤な神経機能障害をきたす事から<難病特定疾患>に指定されています。手術の際には地元の保健所に届けると治療費の補助があります。
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急に脊柱管が狭くなるのではありません。長年のうちに徐々に大きくなって脊髄への圧迫が強くなってきます。徐々に症状が進行してきますので症状の悪化に気づかれていないことも多いです。転んだり、事故などの外傷を契機に急に症状が悪化することがあります。すると脊髄に損傷が加わることで手足の動きが悪くなったり、手足の痺れが出てきます。
頸椎がグラグラしているわけではないので、ネックカラーの装着による頸部安静や牽引療法などの保存的治療が効くことはほとんどありません、根本的な治療は手術以外にありません。薬物療法や理学療法などの対症療法を行いながら手術を考慮することになります。脊髄症状があって、それが進行しているのなら可及的速やかな手術計画が望まれます。
脊椎の間にあり、となり合った脊椎の主たる連結組織であり、クッションの役目もしているのが<椎間板>です。周りの袋のような暑い部分を<線維輪>とよび、中の軟らかい部分を<髄核>と呼びます。髄核はゼラチンのようなものでできています。
椎間板は、誰でも年齢や運動とともに水分が失われて、ガタガタして、つぶれて来てしまいます。腰椎の椎間板が疲労の為に変性していく過程において、ゼラチン状の組織<髄核>を覆っている厚い袋<線維輪>の一部が膨れたり、その袋<線維輪>が破れて中身のゼラチン<髄核>が飛び出してしまったことを、<椎間板ヘルニア>と呼びます。誰でも、年齢とともに多少なりとも、椎間板がつぶれて膨れます。こしたがって、どこから<椎間板ヘルニア>と呼ぶ病気として診断を下すかは医者の判断になります。
誰でも起きる事なのですが、その程度は千差満別です。少し出っ張った程度では腰が重いとか、腰痛がおきてきます。さらに出っ張ってくると中の髄核が飛び出し、腰椎の脊椎管の中を走っている神経を押す事になります。そうすると、その神経走行にそって痛みが生じます。これを神経痛とよびます。この神経は背骨をでると、坐骨神経と呼ばれる一本の神経になるので、この神経の痛みを<坐骨神経痛>と呼びます。
四角い部分が腰椎の前の部分の骨で<椎体>と呼ばれています。その間にあるのが軟骨(ゼラチン状)で出来ているものが<椎間板>です。上から数えて4番目と5番目の間の椎間板が後ろのほうへ飛び出しています。この出っ張りのために神経が圧迫をうけています。
急に脊柱管が狭くなるのではありません。長年のうちに徐々に大きくなって脊髄への圧迫が強くなってきます。徐々に症状が進行してきますので症状の悪化に気づかれていないことも多いです。転んだり、事故などの外傷を契機に急に症状が悪化することがあります。すると脊髄に損傷が加わることで手足の動きが悪くなったり、手足の痺れが出てきます。
頸椎がグラグラしているわけではないので、ネックカラーの装着による頸部安静や牽引療法などの保存的治療が効くことはほとんどありません、根本的な治療は手術以外にありません。薬物療法や理学療法などの対症療法を行いながら手術を考慮することになります。脊髄症状があって、それが進行しているのなら可及的速やかな手術計画が望まれます。
ヘルニコア注入療法は、慢性腰痛や坐骨神経痛に悩んでおられる患者さんの中で手術治療に踏み切れない方に推奨されます。ヘルニアを起こしている髄核には保水成分が豊富で、有効成分のコンドリアーゼが髄核内の保水成分を分解します。結果として神経への圧迫が改善し、痛みや痺れなどの症状が軽減します。当院では、手術経験も豊富な日本脊椎脊髄病学会指導医が治療を担当いたします。1泊程度の入院が必要となりますが、MRI、椎間板造影やブロックを併用して責任椎間板を正確に確認後に、ヘルニコア注入療法を行っております。
新しい保存療法(保存と手術の中間に位置する治療法)の一つとして椎間板内酵素注入治療があります。 注射で飛び出した髄核を小さくして神経への圧迫を軽減する新しい治療法で、一回注射をするだけという侵襲の小さい治療法です。
「ヘルニコア椎間板注用1.25単位」にはコンドリアーゼという酵素が含まれており、椎間板内に直接注射するとグルコサミノグリカンを特異的に分解して椎間板内圧を低下させ、ヘルニアによる神経根圧迫を軽減し症状を(下肢痛、腰痛等)を改善します。全身麻痺の必要もなく、手術と比較して患者さんへの小さい利点があります。
腰椎椎間板ヘルニアに対する薬物治療やブロック治療などの保存治療で十分な効果が得られない患者さん。
年を重ねるにごとに、腰の椎間板がガタガタしたり、出っ張ったりします。また、脊椎管の中にあって脊椎を連結し支える靭帯も分厚くなってきます。すると、下図のように、骨に囲まれた脊椎管が狭くなります。すると、その中の神経が圧迫されてます。首を絞められたような状態になるわけです。この状態を<腰椎脊椎管狭窄症>とよんでいます。このガタガタから、腰椎の連結がうまくいかなくなって、ずれてしまう<亜脱臼>をおこして、<腰椎すべり症>という病態も重なっている人が多いです。
足や膀胱へいく神経の圧迫症状が主です。歩いていると足がしびれたり腫れぼったく感じたり、力が入らなくなって歩けなくなることが多いです。しかし、腰を曲げて少し休んでいると、しびれも取れてまた歩けるようになります。つまり、歩いてやすんでの繰り返しになります。これを<間歇性跛行>と呼んでいます。その歩ける時間、距離がだんだん短くなってきます。また、どちらかの足やお尻のあたりが激しく痛くなったりします。これらの症状は徐々におきてきて、良くなったり悪くなったりを繰り返します。さらには、排尿や排便に障害が出てきたりします。排尿や排便に障害が生じてくると、問題は重大ですから、可及的速やかに治療<外科手術治療>を行う必要があります。
保存的治療のうちの痛みを緩和する対症療法で、時間をかせぐことはできますが、物理的な圧迫で神経が絞めつけられているわけですから、根本的には物理的に圧迫を取り除く手術療法しかありません。保存的治療を行いながらも、症状の進行状況、神経の障害の度合いを予想し、手術療法を視野にいれながら治療していくことが必要になります。
腰椎にズレのある場合には、コルセットを装着して、すこしでも腰椎のズレを少なくすることができます。このことによって痛みを少しやわらげることができます。また、<筋肉のコルセット>をつけるという考え方から、腹筋肉や背筋肉を鍛えることによって症状を和らげる運動療法があります。
腰の周りの筋肉の緊張をとるために、暖めたり、超音波やレーザーを当てたりすることも行われています。痛みをとる事においては<牽引療法>は、その効果をあまり期待できません。痛みをとる方法として、効果を期待できるものとして、圧迫された神経の血の巡りをよくする薬があります。この薬の点滴や注射があります。
鍼灸、マッサージなど種々の治療方法もあります。また、お薬で痛みを和らげたり、ブロックをして一時的に痛みの神経をまひさせたりします。ブロックは神経破壊的な要素もあって、私どもはこのブロックを長期間にわたって繰り返し行うことをお勧めしません。
全身麻酔下に頸部の前方に約3-4cmの皮膚切開を行い、顕微鏡を見ながら頸椎椎間板ヘルニアや骨棘、後靱帯(骨化)を切除•摘出し、脊髄と神経根の除圧を行います。 ケージ(籠)と呼ばれるプラスチック素材にチタンをコーテイングした小さな箱に骨線維、人工骨を詰め込んで、椎間板の摘出部にはめ込みます。後に上下の椎体と融合し一塊の椎体となります。これで固定が完成となります。手術時間は麻酔の導入、覚醒時間も含めて3-4時間ほどです。この手術での出血は20-30ccで、輸血は必要ではありません。
手術直後は仰臥位(仰向け)でベッド上絶対安静ですが、手術翌日には座っていただきます。手術翌々日には歩行•リハビリテーションを開始していただきます。術後評価( CT scan, MRI, 日常生活レベル評価)を行い手術後7-10日で退院です。
全身麻酔下に伏臥位(腹這い)となり、頸部の後ろに約7-8 cm の皮膚切開を行い、顕微鏡を見ながら頸椎椎弓を観音開きあるいは片開きにして、骨の形(椎弓に似た)をしたセラミックでできた箱やチタン製の小さなプレートで脊柱管を拡大した状態にします。このセラミックの箱、チタン製のプレートは後に周囲の組織と一体化し、これで椎弓としての役割を再現できるようになります。麻酔導入覚醒時間を含めて手術時間4-5 時間ほどで、この手術での出血は 50 - 70 ml 程度で通常は輸血は必要ではありません。
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手術直後は仰臥位(仰向け)でベッド上絶対安静ですが、手術翌日には座っていただきます。手術翌々日には歩行•リハビリテーションを開始していただきます。術後評価( CT scan, MRI, 日常生活レベル評価)を行い手術後7-10日で退院です。
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全身麻酔で、出っぱっている椎間板をとる手術です。背中の真ん中の皮膚を 3 cm 程度縦に切り、背中の筋肉をよけて、腰椎の後ろの部分を一部ドリルで削りとります。そこで、手術顕微鏡を使用して、神経をよけながら、出っ張った椎間板を取り除きます。手術時間は2時間足らずです。この手術で、90~95%の方で神経痛は良くなるものと思います。しかし、椎間板がつぶれた状態にかわりはないので、腰痛が残存する場合が半分程度あります。
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手術は腰椎後方減圧術(ならびに腰椎後方固定術)が一般的です。全身麻酔で、椎弓という脊椎管を形成している骨を削りとり、同時に分厚くなった靭帯も取り除いてしまう手術です。背中の真ん中の皮膚を 3 cm 程度縦に切り、背中の筋肉をよけて、腰椎に達します。そこで、手術顕微鏡を使用して、腰椎の後ろの部分を一部ドリルで削りとります。同時に分厚くなった靭帯もとってしまいます。手術時間は2時間足らずです。さらに、腰椎のズレ<腰椎すべり症>をともなっている場合は、腰椎に金属のボルトのようなものを打ち込んで腰椎がずれないように固定します。この場合は手術時間はさらに2時間ほど長くなります。
手術による症状の改善の度合いは、それまでの障害の度合いに関係します。個々の予想される神経の障害の度合いを考慮して手術説明の際に詳しく説明いたします。
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脊椎圧迫骨折の主な原因は「骨粗しょう症」です。まずは、「骨粗しょう症」について知ることからはじめましょう。
「骨粗しょう症」とは、骨がスカスカになり、徐々にもろくなって骨折を起こしやすくなる病気です。骨粗しょう症の原因には、加齢、生活習慣(運動不足、食生活、喫煙など)、女性の場合は閉経後のホルモンバランスの変化などがあります。特に加齢による骨密度(骨量)の低下は、程度の差はありますが、誰にでも起こりえます。
骨粗しょう症の初期には、痛みなどの自覚症状が現れにくく、病気が進むにつれて、次第に背中や腰の痛み、背骨が曲がる、身長が縮むといった症状が現れはじめます。さらに骨粗しょう症が進むと、骨密度の低下によって、骨折を起こしやすくなります。特に、手首、背骨、太もものつけ根が、骨折を起こしやすいところです。
現在、わが国には1,100万人を超える骨粗しょう症の患者さんがいるとされています。そして、骨粗しょう症による骨折のために「寝たきり」の生活を送っている患者さんもおられます。今後も、その患者さんの数は、増えていくと予想されます。
1) 参考資料: 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン (2006年版)より
脊椎圧迫骨折」とは、背骨(脊椎)が、押しつぶされるように変形してしまう骨折です。脊椎圧迫骨折の主な原因は「骨粗しょう症」です。 背骨 (脊椎) は、 24個の小さな骨で構成されており、体の重みをバランスよく支えています。しかし、骨粗しょう症になると、骨がもろく なるため、体の重みを支えきれずに椎体部分がつぶれてしまうことがあります。
骨粗しょう症になると、尻もちはもちろん、くしゃみをしたり、不用意に重いものを持ち上げたりといった、ちょっとしたきっかけで、椎体がつぶれることがあります。
従来より、「脊椎圧迫骨折」の治療方法には以下のような方法があります。
コルセットやギプスを装着し、ベッドの上で安静を保ちます。また、痛み止めや、骨粗しょう症のお薬を使用します。
コルセットを巻いたまま生活する必要があるため、日常の活動が制限され、長期の入院が必要になることがあります。また、長期間、ベットの上で安静を保っていたために、著しい筋力低下や見当識障害が発生することもあります。
手術によって骨を移植したり、金属製のねじや棒で骨を固定します。手術の際は、通常、入院が必要となり、リハビリも必要になります。
Balloon(バルーン) Kyphoplasty(カイフォプラスティ) (略して「BKP」と呼ばれています)は、1990年代にアメリカで開発された、新しい治療法です。 この治療法は、世界で80万件以上の脊椎圧迫骨折に対して行われています 3)。 日本でも治験 4)を行い、その安全性と有効性が確認され、2010年2月に 厚生労働省の承認を得ました。
脊椎圧迫骨折によってつぶれてしまった椎体を、骨折前の形に近づけ、椎体を安定させ、痛みをやわらげる治療法です。この治療法には、バルーン(風船) 状の手術器具や医療用の充填剤 (骨セメント) を使用します。(詳しくは、次のページに記載しています)この治療法の特長は、短時間の手術 (約1時間以内)で、早期に痛みの 軽減が行えること、生活の質(QOL)の向上が期待できることです。
手術は全身麻酔をして行ないます。ベッドにうつぶせに寝た状態で背中を 2ヶ所(1cm程度) 切開し、手術にはレントゲンの透視装置を使用します。
背中から針を刺入し、骨折した椎 体への細い経路を作ります。そこへ小さな風船のついた器具を入れます。
椎体の中に入れた風船を徐々に膨らませ、つぶれた骨を持ち上げて、できるだけ骨折前の形に戻します。
風船を抜くと、椎体内に空間ができ ます。その空間を満たすように、骨セメントを充填します。
手術は1時間程度で終わり、骨セメントは手術中に固まります。
骨粗しょう症による脊椎圧迫骨折の患者さんであり、なおかつ、十分な 保存的治療によっても背中の痛みが改善されない方が対象になります。ただし、骨折した骨の数や形、全身の健康状態等によっては、対象とならない患者さんもおられます。
Balloon Kyphoplasty(BKP)は、専門のトレーニングを受けた先生が手術をされますが、ほかの手術と同様、患者さんの状態により手術を受けることによる一般的なリスクや、骨セメントを使用することにより発生するリスクなどがあります。
詳しくは、担当の先生にご相談ください。