大動脈とは心臓から全身に血液を送る全身でもっとも大きな血管で、大動脈が瘤状に拡大したものを大動脈瘤と言います。大動脈瘤はお腹の血管に発生することが最も多く、お腹にできた大動脈瘤を腹部大動脈瘤と呼びます。
腹部大動脈瘤は基本的に無症状ですが、時間と共に拡大し、最終的に破裂して命を失う非常に怖い病気です。薬による治療法はなく、破裂の危険性が高くなると、破裂を防ぐために動脈瘤の手術が必要となります。
手術には ①人工血管置換術(お腹を切って大動脈瘤を人工血管に置き換える手術)と②大動脈カテーテル治療(ステントグラフト内挿術:お腹を切らない手術)の2つがありますが、当院センターでは経験豊かな大動脈カテーテル治療の指導医が在籍し、多くの患者において ”お腹を切らない手術” を提供しています。
足の付け根の動脈からカテーテルという管を挿入し、ここからステントグラフトという特殊な人工血管を血管の中まで進め、大動脈瘤前後の正常血管にまたいでステントグラフトを留置することで大動脈瘤内への血流を遮断する治療法です。血流が遮断されると、大動脈瘤内の圧力が低下し破裂する危険性は極めて低くなります。
外科的治療である人工血管置換術と比べて、お腹を切らないステントグラフト内挿術は体にかかる負担が小さいため、外科的手術が不向きとされる高齢者や重い持病を持っている患者さんでも治療を受けることが可能です。なお、術後は通院が不要というわけではなく、定期的なCT検査による評価が必要です。
外科的治療である人工血管置換術と比べて、お腹を切らない腹部大動脈カテーテル治療(ステントグラフト内挿術)は体にかかる負担が小さいため、外科的手術が不向きとされる高齢者や重い持病を持っている患者さんでも治療を受けることが可能です。なお、術後は通院が不要というわけではなく、定期的なCT検査による評価が必要となります。
腹部大動脈ステントグラフト内挿術により腹部大動脈瘤内への血流遮断に成功した症例です。術後、動脈瘤は退縮し、術後8年でのCT検査でも大動脈瘤は退縮したまま維持できていました。
ステントグラフトによる創部(写真は他の患者)は非常に小さく体の負担は少ない治療です。
Mel Sharafuddin, MD; EndoVascular Aortic Aneurysm Repair (EVAR) CIPG 2013
1991年に世界で初めて大動脈カテーテル治療(ステントグラフト内挿術)が報告されましたが、日本では2006年に薬事承認され本格的に普及しました。当院の担当医は2009年から本治療に従事しており、胸部大動脈ステントグラフト実施医・指導医、腹部大動脈ステントグラフト実施医・指導医の資格を取得しています。これまでに500例以上の大動脈カテーテル治療を経験し、現在も他施設に出張して育成指導を行っています。
当院では、2023年6月1日に、「腹部大動脈低侵襲治療センター」を開設しました。当センターでは加齢とともに増加する動脈硬化の一つである腹部大動脈瘤に対して高いレベルの医療を提供できると考えています。動脈瘤を有する患者さんは高齢な方が多く、長期入院にて活動性が低下し、認知症が進むなど懸念されることもあるかと思いますが、カテーテル治療であれば傷が極めて小さいため、短期間の入院(2泊3日~)で治療が可能です。
なお、胸部大動脈瘤や大動脈解離に対する手術(胸部外科治療・胸部ステントグラフト内挿術)は連携病院で対応しています。
2025年3月1日現在
午前診療時間:9:00-12:00
受付時間:8:00-12:00
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | |
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1診 | - | - | 高橋 | - | - | 高橋 |
2023年6月になにわ生野病院の腹部大動脈瘤低侵襲治療センター長、2024年4月に循環器内科副部長に就任致しました。なにわ生野病院は二次救急医療機関として循環器救急としても地域の核となる病院であると考えております。私はこれまで循環器内科医として心不全や心筋梗塞、大動脈解離などの多くの循環器救急に携わってきましたが、これまでの経験を活かし、今後は「なにわ生野病院・循環器救急チーム」と共に「一人でも多くの患者さんの命と健康を守れる」よう邁進していく所存です。
また、私の専門領域として大動脈治療や末梢血管治療も担当していますが、大動脈領域では2023年6月に腹部大動脈瘤低侵襲治療センターを開設し、「切らない大動脈瘤治療」を提供しています。末梢血管領域では「患者さんの足と歩行を守る。」をモットーに多職種で協力し、診療にあたっています。心臓・血管病でお困りの方がおられましたら、気軽にご相談ください。